こんにちは、poco moonです。今日のテーマは「季節とともに音を紡ぐ」です。季節から感じるインスピレーションは、曲作りにとても大切だと感じています。
自然から得たインプットが、音としてアウトプットに繋がる瞬間というのはとても豊かで、季節感のある曲が生まれた時には「今を生きている」という実感が湧きます。
気温、光、風、匂い、五感で受け取ったものがそのまま旋律や音色に変わっていく感覚。それが、私にとって音楽制作の一番の喜びです。
春 ─ 柔らかく、芽吹くような音を
春になると、空気の中にほんのりとした温かさが戻り、花や草の色も少しずつ明るくなります。私の中では、和楽器の音がとても似合う季節。特に琴の明るく澄んだ音色は、春の日差しのように軽やかで、心をすっと開いてくれるような感覚があります。
メロディには長調を使うことが多く、軽やかなストリングスやベル系の音を合わせると、優しい春の風景が自然と浮かび上がります。
夏 ─ 生命の息づかいをリズムで描く
夏は、エネルギーに満ちた季節。木々の緑が濃くなり、川や海の音も力強く響きます。この季節の音楽には、ビートを少し強めにすることが多いです。
自然の中で聴こえるリズム、波の周期、蝉の鳴き声、風が木々を揺らす音、それらが音楽的なパターンとして心に残り、ドラムやパーカッションのフレーズに反映されていきます。夏の音は「生きている」という感覚を最も感じさせてくれます。
秋 ─ 響きの余白に、優しさを
秋は、空気が少し冷たくなり、夕暮れの時間が長くなる季節。私はこの時期に、ディレイやパッドを多く使います。音の余韻を少し長めにとることで、心の奥に残るような柔らかさを出すことができます。
メロディも控えめに、ゆるやかなテンポで。夏の賑やかさが静かに遠のいていくような、少しの寂しさとぬくもりを感じる音を目指します。
冬 ─ 静けさの中の透明感
冬は、私にとって「音の静けさ」を意識する季節です。リバーブを深くかけて、空間の広がりを大切にします。音数を減らしても成り立つような、透明感のある構成。白い景色にたたずむような音が好きです。
ときどき、ピアノやシンセの高音を雪の結晶のように配置して、空気の冷たさと美しさを表現します。冬の音は、静寂の中にこそ豊かさがある、そんな感覚を教えてくれます。
季節で変わる「街の音」
フィールドレコーディングをしていると、同じ場所でも季節によって全く違う音が聴こえることに驚かされます。春には鳥のさえずりが多く、夏は虫の声と風の音が力強く、秋は葉が擦れる音、冬は人の足音がやけに響く。音の種類や響き方が、そのまま季節の情景を伝えてくれます。環境音そのものが、季節を語る楽器のように思えます。
季節の音を生きるということ
今年は季節を意識した曲作りを続けてきて、とても充実しています。春には芽吹き、夏には光、秋には余韻、そしてこれからやってくる、冬の静けさ。四季を通して、自分の感情も音も少しずつ変わっていくのがわかります。
季節の中で感じたインプットを音楽にアウトプットできること。それは、作曲家としての幸せそのものであり、自然と共に音を紡ぐことの喜びでもあります。